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日本EU学会ニューズレターNo.4

1999年12月7日

〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-4

横浜国立大学大学院   国際社会科学研究科(国際経済法学系)

庄司克宏研究室内   日本EU学会事務局

Tel&Fax:045-339-3641

E-mail:eushoji@mb.infoweb.ne.jp

European Studies Association-Japan


目次

Ⅰ.理事長挨拶

Ⅱ.創立20周年を記念して、欧州連合日本政府代表部・木村崇之大使より祝辞を頂きました

Ⅲ.創立20周年記念研究大会における駐日欧州委員会代表部・オブ=ユールヨーゲンセン大使のスピーチ(要約)

Ⅳ.創立20周年を記念して、日本EU(EC)学会創立の思い出を名誉会員に語って頂きました

Ⅴ.ジャン=モネ・チェアー制度の日本への適用について

Ⅵ.編集担当委員交替のお知らせ

Ⅶ.2000年度における学会名簿作成について

Ⅷ.次期研究大会開催について

Ⅸ.在外研究からの帰国報告

Ⅹ.新入会員の紹介

Ⅺ.文献紹介


Ⅰ.理事長挨拶-日本EU学会の皆様へ-

本学会創立20周年記念研究大会を去る11月6、7の両日、慶応義塾大学三田校舎において開催いたしました。多くの外国からのゲストをお迎えして、第1日目は使用言語を英語とし、午後には欧州委員会第10総局のジャクリーヌ・ラステヌーズ大学情報担当局長および駐日欧州委員会代表部のオブ・ユールヨーゲンセン大使にご講演をお願いしました。ラステヌーズ女史には長年にわたる日本・EU間の学術的関係の推進、世界的研究ネットワークの形成等の功績に対して、名誉会員の称号を授与しました。第2日目も通常の大会よりも時間を延長して、多くの研究報告をしていただきました。本大会が20周年記念にふさわしく実り多い盛大な大会になったことは、ひとえに会員の皆様のご協力の賜物です。また開催校の慶応義塾大学には様々なご配慮をいただき深く感謝いたします。

本学会は、1980年11月に立命館大学において日本EC学会として設立されましたが、前史として1976年に駐日EC委員会代表部の後援を得て創設されたEC研究者大会があります。その第5回大会が日本EC学会の設立大会となり、同時にその第一回研究大会となりました。創立以来の学会の歴史を振り返ってみますと、その間の会員各位のご努力と学会の着実な発展に深い感慨を覚えます。

一方、研究対象である欧州統合も多くの困難に遭遇しながらも、目覚ましい進展を示しつつあり、今後の我々の研究活動は益々活発化することと思われます。この20周年を一つの契機として、今後さらに本学会が大きく発展することを祈念いたします。

来年の研究大会の開催校は近畿大学、共通論題は「欧州統合の歴史と理論-シューマン・プラン50周年-」と決定いたしました。理事会は早速この大会の準備にとりかかります。皆様の熱心なご参加、ご協力を期待しております。


Ⅱ.創立20周年を記念して、欧州連合日本政府代表部・木村崇之大使より祝辞を頂きました

日本EU学会創立20周年を心よりお祝い申し上げます。

私は、EU代表部大使として着任してまだ1年になりませんが、その間に印象づけられたことが二つあります。一つは、私が15年ほど前に外務省のEC担当課長をしていた頃と比べて、現在の日欧関係が非常に友好的であることです。15年前といえば、ユーロ・ペシミズムが蔓延し、日欧関係でも「ポアチエの戦い」を何とか収めたところで、ECとの交渉と言えばいわゆる摩擦案件の処理ばかりでした。それではいけないということで、閣僚レベルの定期会合の場を作ることを提案し、第1回日EC閣僚会議をようやく開いたことを記憶しております。

現在の日EU関係では、摩擦案件は少なく、圧倒的に協力案件が中心になっております。WTO新ラウンドに対する協力、MRA(相互承認協定)交渉、競争政策協力等の経済関係のみならず、南東欧に関する協力やKEDOにおける協力、さらには世界各地域に関する政策協議と協力案件にまで広がっております。ただ、そのような変化の理由は欧州の自信回復のほかに、日本経済の現状から日本の脅威が感じられなくなった等、手放しで良いとばかりは言えない面もあるかと思います。また、日欧の協力関係と言っても、日米欧3者の関係から見ると、日欧は依然もっとも弱い結びつきで、一層の努力が必要であることに変わりはありません。

もう一つ印象づけられたのは、この1年の間のEUの激しい動きです。本年1月にユーロが発足し、5月にはアムステルダム条約が発効し、欧州の統合が一つの大きな段階を超えました。また、3月にはサンテール前委員長が欧州議会によって辞任に追い込まれ、EU各機関の中で力が弱かった欧州議会が欧州政治の表舞台に出てきました。後任委員長になったプローディは「大統領的な」強力委員長として、精力的な活動を始めております。

共通外交安全保障政策についても、10月にソラナ代表が就任し、WEUのEUへの吸収が動き出し、EU独自の介入戦力についても国防大臣を加えた理事会で議論されております。さらにEU拡大についても、加入候補国を13カ国に増やす他、旧ユーゴ諸国等もいずれは加入させるということが欧州のコンセンサスとなった感があります。これは直接的にはコソヴォ紛争とトルコ地震といういずれも不幸な出来事が契機になったもので、また、その実現はかなり先になると思われますが、「欧州」の外延が大きく広がったと言えます

このような中で私どもとしても、日々の外交活動に追われる中で、欧州における変化の潮流と今後の行く方に思いを致し、変わりつつある国際環境の中での対EU外交のありかたにつき自問しておるところであります。

日本EU学会の皆様におかれても、当地にお越しになる際には、是非当方にご連絡をいただきたく存じます。時間の許す限り、皆様のご専門のお話をうかがい、欧州の将来と日EU関係についても意見交換が出来ればと思っております。


Ⅲ.創立20周年記念研究大会における駐日欧州委員会代表部・オブ=ユールヨーゲンセン大使のスピーチ(要約)

「欧州統合におけるビジネスの役割」

本スピーチのタイトルである「欧州統合におけるビジネスの役割」は、ロベール=シューマンの1950年の宣言からの引用である。この言葉は、ヨーロッパのビジネス・コミュニティーや他の社会的アクターが大きく関与することによって、欧州連合が構築されてきたということをよく表している。ビジネス・コミュニティーは単一市場および経済通貨同盟から得られるビジネス上の利益のために、そして、前進に対する起業家の理想を理由として統合を支持した。このような理由こそが、「ヨーロッパ要塞 (Fortress Europe)」ではなく、単一市場と規制緩和による市場の開放をもたらしたのである。

更に、ビジネスは欧州統合の様々な側面について多くの役割を担うことが期待されている。殊に、経済通貨同盟および意思決定手続の両方において、ビジネス・コミュニティーが労働組合やNPOと共に積極的なイニシアティブを採ることが重要である。また、権限の委譲を目的として欧州委員会が適用に熱心である垂直的補完性原理についても、ビジネス・コミュニティーの寄与が期待されている。

ヨーロッパのビジネス・コミュニティーの再生された活力と労働組合の責任ある行動が、欧州統合の達成において重要な役割を担うことは明らかである。また、ヨーロッパのビジネス・リーダーがヨーロッパの新たな段階において、その翼の中に安住することなく、そのような任務を担うことを選択するということは確かであろう。

(“The Role of Business in European Integration”, Speech by Ambassador Ove Juul Jørgensen, Head of Delegation of the European Commission in Japan, to the 20th Annual Conference of the European Union Studies Association of Japan, Keio University, Saturday, 6 November, 1999 (http://jpn.cec.eu.int/japanese/whatsnew/index.html)より要約: 青柳由香・横浜国立大学大学院生)


Ⅳ.創立20周年を記念して、日本EUEC)学会創立の思い出を名誉会員に語って頂きました

「日本EC学会創設当時の思い出」

清水 貞俊(東海学園大学教授、立命館大学名誉教授、元日本EU学会理事)

 

日本EC学会は1980年11月に設立された。2000年を迎えようとしているこの時期に20年の誕生を迎えたのである。この学会の設立総会が立命館大学で開催されたことも印象深く、感無量である。しかしこの学会の設立は、それに先立つ4回の「日本・EC研究者大会」を経て第5回目の「研究者大会」が学会の設立総会となったのである。

EECはその発足以来日本でも、学界においても、又ジャーナリズムにおいても、政界、財界においても注目されていた。色々なレベルで研究会が存在していたと思うが、特に精力的に活動していた4つの研究会が一堂に会して「研究者大会」を開催したのは1976年のことであった。政治、経済、法律等々その分野も異なり、地理的にもかけ離れていてこれ迄全然交流のなかったこれら研究会のメンバーが一緒になったことは大きな意義があった。この「研究者大会」は第1回はよく覚えていないが、プレスセンターで、第2回は慶応義塾大学、第3回は同志社大学、第4回は一橋大学で開催されている。まだ学会としての体裁をとっていず、資金的にも組織的にも動きにくい情況の中でこの研究会を開催し、報告書を刊行されたこれらの機関の苦労は大きかったと思う。実質的には第2回大会が本当の学会設立大会と見てもよいとさえ思っている。またこの産婆役を演じてくれた駐日EC委員会代表部の労と資金援助に対しても御礼を申し上げたい。

発足当初(発足前も含めて)は上記の4研究会の代表報告が中心で、各研究会の対抗意識もあり(主観がまじっているかも知れない)、又法律・政治・経済等の他流仕合的な面もあり、またテーマも豊富で、非常に活発だった(今が活発でないという意味ではない)。学会が段々成長し、

20歳を迎えると、人間でいうと成人式を迎えることになる。最近の学会は研究報告の内容も充実しているし、組織的にも確立されて、今後益々向上していくことだろう。最近では発足当初の4研究会の集まり的なものは殆ど消滅し、一つの学会として運営されている。良いことだと思う。理事長を含め、その他理事の構成も、法律、政治、経済といった枠を取り払って弾力的に決定しても良い時期に来ているのではないだろうか。最近はそのような学問領域も融合され峻別できなくなる傾向もあるし、又歴史、社会、文化等も対象となってきているからである。


Ⅴ.ジャン=モネ・チェアー制度の日本への適用について

創立20周年記念研究大会の第1日目に欧州委員会のラストヌーズ女史から、ジャン=モネ・チェアー制度の日本への適用について提案が発表され、それを受けて事務局が必要とされる学会の情報を同女史に送付した。

(同制度の詳細については、http://europa.eu.int/comm/dg10/university/index_en.html参照。)


Ⅵ.編集担当委員交替のお知らせ

編集担当委員が大隈宏理事から辰巳浅嗣理事に替わりました。大隈理事のこれまでのご貢献に感謝申し上げます。


Ⅶ.2000年度における学会名簿作成について

次回の会員名簿作成より、アンケートをとり、各会員が開示したくない情報を確認の上、その部分を削除した形で名簿を作成することとなりました。


Ⅷ.次期研究大会開催について

(1)開催校: 近畿大学

(2)日時: 2000年11月11・12日

(3)共通論題: 「欧州統合の歴史と理論-シューマン・プラン50周年-」

(なおシューマン・プランに限定する意味ではない)

(4)分科会の設置について:

次期研究大会において、実験的に分科会を設置することが決定された。ただし、理事会において毎年見直しを行い、廃止することもありうる。具体的には、第1日目(土)午後1:00~3:00において、当面3分野(政・経・法等)に分かれ、各2名の研究報告(合計6名)が行われる。次いで、休憩をはさみ、全体セッションが行われる(1ないし2名の報告者またはゲストスピーカー)。なお、分科会の各分野ごとに責任者(理事)を1名置くこととなった(人選については次期理事会にて行う)。


Ⅸ.在外研究からの帰国報告

1999年1月1日以降に在外研究より帰国された方の紹介を行います。今後も続ける予定ですので該当者の方は、原稿を事務局にご送付下さい(2000年3月31日締切)。要領は下記にならって下さい。

小林正英(こばやし・まさひで)

①現在の所属:

②在外勤務先: 在ベルギー日本国大使館(ベルギー王国・ブリュッセル、外務省専門調査員)

③在外勤務期間: 1996年10月-1999年10月

④調委嘱事項: 欧州安全保障情勢の調査

⑤成果:

  • 特にブリュッセル所在のNATO事務局、WEU事務局、ベルギー外務省及びその他必要な動向を逐次調査した。NATO拡大、バルカン危機、NATO・露交渉及びNATO新戦略概念採択等につき報告を行った。オステンド(ベルギー)、パリ、エアフルト(独)、ロードス島(ギリシャ)及びローマでのWEU閣僚理事会(外相・国防相)、ルクセンブルグNATO外相理事会とワシントンNATO首脳会議に際しては現地より報告を行った。
  • 日・NATO高級事務レベル協議(97年春)、ソラナNATO事務総長訪日(97年10月)、池田外相NATO本部訪問(97年6月)、日・NATO安全保障セミナー(99年10月)準備・実施に携わった。
  • 「NATOの東方拡大、ダイナミックな可変翼NATOへ」『外交時報』(1998年3月号)
  • NATOを中心とする欧州・大西洋地域の安全保障は、共通の同盟国アメリカ、共通の隣人ロシア、共通の新任務である冷戦後の安全保障情勢への対応といった共通点を有するとの観点を有しつつ実務にあたり、その成果を踏まえ、NATOの対露関係、欧米同盟、N・TOの新任務及び冷戦後の安全保障情勢への対応等につき論文を準備中。

Ⅹ.新入会員の紹介

本年11月の理事会において、下記の22名の新入会員が承認されました。

入会申請者

1. 鈴木  規子   慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程一年 政治

2. 吉田  正法   防衛庁長官官房総務課 政治

3. 五十嵐 智友   愛知学院大学情報社会政策学部・教授 政治

4. 坂本  進    早稲田大学大学院社会科学研究科地球社会論専攻 政治経済

5. 稲積  真保   ㈱京都リサーチパーク 政治

6. 田中  武憲   名城大学商学部商学科・講師 経済

7. 臼井  陽一郎  新潟国際情報大学情報文化学部・講師 政治

8. 住    政二郎   東京都立大学大学院人文科学研究科教育学専攻修士課程一年 教育

9. 根本  洋一   横浜国立大学経済学部・助教授 法律

10.  梶山  恵司   ㈱富士通総研 経済研究所 経済

11.  小池  正雄   信州大学農学部・教授 経済

12.  岩崎  允彦   上武大学商学部・教授 政治

13.  鈴木  敏之   ㈱三和銀行 資金証券為替部 経済

14.  岩見  昭三   奈良産業大学経済学部・教授 経済

15. 大下  丈平   九州大学経済学部・教授 経済

16.  堀内  めぐみ  青山学院大学大学院国際政治経済学研究科 政治

17.  白畑  太    青山学院大学大学院国際政治経済学研究科 政治

18.  西川  明    青山学院大学大学院国際政治経済学研究科 経済

19.  池田  崇志   弁護士(大阪弁護士会所属) 法律

20. 入稲福 智      平成国際大学法学部・専任講師 法律

21. 楊   冰    大阪産業大学大学院生 経済

22. 南山  大学   ヨーロッパ研究センター 維持会員


Ⅺ.文献紹介

『ジェトロセンサー』 99年11月号 「欧州特集:ユーロ導入後の欧州産業 ~競争力は高まるか、ユーロの課題は~」

ユーロ誕生から約1年。同誌の特集では注目集めるユーロの行方、また市場統合・通貨統合の実現による欧州産業の競争力、EU拡大の動きなどを追っている。識者の見解を紹介すると、神戸大学 久保教授は「欧州産業におけるR&Dの遅れと基礎サービス価格・労働コストの高さ」を指摘するも、通貨統合・各種規制緩和によりこれらの問題が解消の方向にあるとしている。一方、為替リスクがなくなったことにより「企業の欧州化、グローバル化に拍車が掛かった」(法政大学 長部教授)。実際、ジェトロの現地報告では、航空、エレクトロニクス、流通分野等で顕著な再編の動きがリポートされている。特に流通分野では、流通業界がメーカーに対し「欧州統一調達価格」を要求するなど、調達条件の改善に向けた動きがリポートされた。EU経済統合の最終段階であるユーロ導入。欧州復活に向けまだ課題は残るものの、本特集では変わりつつある欧州の今をレビューしている。