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辰巳浅嗣理事長(2009ー11年)

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理事長メッセージIV

昨年11月13・14の両日、青山学院大学青山キャンパスにおいて、「リスボン条約とEUの課題」を共通論題として第31回研究大会が開かれました。メイン会場が厳かな雰囲気のたち籠める礼拝堂というのは、おそらく大会史上初めてであったろうと思われます。開催に先立ち、ご多忙の中、同大学・伊藤定良学長がご挨拶下さり、その後直ちに庄司克宏前理事長による基調講演が行われました。前年度の共通論題が「ユーロ10年と金融危機」で、報告が多少とも経済分野に集中した感がありましたが、今回は両日にわたり、法律、経済、政治・社会文化の各分野の報告がバランスよく配置され、またEUの域内政策と対外関係に関する報告も均衡がとられていたのが特徴だったと思います。外国人ゲストスピーカーとしては、ピエ・エカウト教授(ロンドン大学キングズカレッジ)がEU外交安全保障政策の領域、ジュリー・レイナルさん(駐日EU代表部一等書記官)が環境政策の領域についてご講演下さいました。両氏と、ご協力いただいた駐日EU代表部に改めて御礼を申し上げます。初日の大会終了後開かれた懇親会は、開催校の羽場久美子理事を初め、関係諸氏のお蔭で、楽しくかつ盛大に開かれました。

早いもので、理事長の2年間の任期がほぼ終ろうとしています。図らずも、学会員による初の公選制の理事会によって理事長に選ばれ、昨年は無事学会創立30周年を迎えることができましたことを心から光栄に思っております。理事公選制は多年にわたり歴代理事長のもとで検討され、庄司前理事長のもとで漸く実現したものですが、一層の改善を図るため、私のもとでも選挙制度検討委員会を立ち上げ、一定の改革案をまとめることができました。学会報告と年報の一層のレベルアップを図るための企画委員会を立ち上げたことは、今後の学会運営に寄与するものと期待しています。先に述べましたとおり、今回の研究大会の報告が各分野バランスよく配置され、内容的にも充実したものであったのは、同委員会での綿密な審議をベースに理事会で十分審議した結果であると思います。今後

一層、綿密かつ精緻に計画された形で研究大会が行われ、充実した報告と優れた年報の編纂ができますことを期待しています。

昨年は2回、海外の学会に参加できたことも、私の喜びとするところです。1月にはアジア太平洋EU学会(EUSA-AP)のためインドのニューデリーに、5月には世界EC学会(ECSA-World)のためブリュッセルに招聘していただきました。いずれも有意義で楽しい思い出となりましたが、特に初のインド訪問は、異文化体験のオンパレードで印象深いものでした。ヨーロッパ研究をしている私が、もし学会理事長になっていなければ、インド行は生涯なかったかもしれません。

先の理事会で久保広正理事(神戸大学教授)が次期理事長に選出されました。久保先生には私の積み残した仕事、できなかった数々の仕事をしていただくことになります。企業出身の教授としてのキャリア、EUインスティテュート関西のリーダーとしてのご経験とご実績を発揮して下さるものと期待しています。EU学会に限らず、学会も大学も海外に視野を広げ世界の各大学、各研究機関等と連携を図ることは、日々重要性を増しています。そのような状況で国際経験豊かな久保先生がわが学会の新理事長に就任されることは、まさに天の配材であろうと信じています。

第32回研究大会は、「グローバル化とEU統合の再検証―域内市場完成20周年(に向けて)」という共通論題のもとに、本年11月5・6日、松山大学で開催されます。担当理事は同大学・松浦一悦理事です。11月、松山でお会い致しましょう!!

この2年間、たまたま学長職を兼任したため、学会の業務に専念できず、十分のことはできませんでしたが、学会員の皆様、理事の皆様、とりわけ鷲江義勝前事務局長、岩田健治事務局長には、ほんとうにお世話になりました。有難うございました。

(2011年2月28日掲載)


理事長メッセージIII

今回はまず、5 月25・26 両日に開催された、世界EU学会(ECSA-World)の研究大会の模様についてご報告申し上げます。正式には「グローバル・ジャン・モネ/ECSA-World 会議2010」。その名のとおり、原則的にはジャンモネ・チェアに登録を認められたEU 研究者による大会ですが、世界各国のEU(またはEC)学会の理事長も欧州委員会の招聘を受けて参加します。大会は隔年に開かれ、今回はブリュッセルの欧州議会ビルが会場となりました。ビルの名がアルティエロ・スピネッリ館とかアンリ・スパーク館とか、創成期のEC を彷彿とさせる名を付しているので、感慨ひとしおです。

ブリュッセルにはゆとりを持って、22 日夕刻到着しました。大会前夜の24 日夜、宿泊先のホテル・ヒルトン・ブリュッセルにおいて、欧州委員会のご招待によりディスカッション・ディナーが開かれ、40 ヵ国以上のEU 学会の理事長が参加しました。この会合の趣旨は、各国におけるEU 研究の現状および学会運営の近況について情報交換し、互いの親睦を図るところにあるようです。ECSA-World エンリケ・バヌーズ会長の司会のもと、欧州委員アンドリス・ビエバルグス氏(教育・文化・多言語・青少年担当)のスピーチを皮切りに、欧州代表としてドイツEU 学会理事長ミュラー・グラフ教授が、非欧州諸国代表としてニュージーランドEU 学会理事長マーチン・ホランド教授がそれぞれの立場からユーモアたっぷりにEU の研究状況について報告されました。その後自由に数ヵ国の理事長が簡潔に自国の状況を紹介しました。私は出国前エンリケ会長と何度かメールの交信をしていたこともあり、また岩田事務局長や小久保編集委員長等により日本EU 学会の英文紹介をご準備頂き、事前にメールで送信しておきましたので、簡単に日本のEU 研究の現状についてスピーチしました。このディスカッション・ディナーでは、同じテーブルで隣り合わせたブルガリアおよびウクライナの理事長たちと話し合えたのが、最も楽しい思い出となりました。私にとって、普段これら諸国の方と膝突き合わせて語り合う機会は滅多にないからです。

今大会の共通テーマは、「リスボン条約後のEU」。わが学会の本年度の大会の共通テーマとほぼ同じで、昨年12 月に発効したばかりのリスボン条約を多角的に検証するものであり、まさに時宜を得た企画です。参加者は約450 名。

日本からは、ジャンモネ・チェアの田中俊郎(慶応義塾大学)、久保広正(神戸大学)、羽場久美子(青山学院大学)の各教授が参加されました。大会では、EU 加盟諸国の言語のうち17 ヵ国語による同時通訳が行われました。冒頭、欧州議会のイェジ・ブゼク議長と欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長の基調講演が行われ、そのあと大会に先立ち、2010 年度ジャンモネ賞の授賞式が行われました。初日(5 月15 日)の大会セッションは3つで、「機関のバランスと機関間協力」「基本的権利とシチズンシップ」「グローバルな経済・環境の挑戦に直面するEUの新枠組み」、2 日目のセッションは2つで、「国際的政治・安全アクターとしてのEU」、そして「最終セッション」(主にEU 教育の手法やあり方について)でした。ギリシャの財政破綻問題など緊迫した欧州情勢の真っ只中で開催された大会でしたが、私の印象では、経済・環境に関するセッション以外では、生々しい現状に関する侃々諤々たる討議というより、むしろリスボン条約発効に伴う変化に着目した制度論的・理論的な報告が目立ちました。私としては、予定されていたEU 外務・安全保障政策上級代表キャサリン・アシュトン氏の報告がキャンセルされたのがまことに残念至極ですが、それだけご多忙なんだろうと理解することにしました。

翌26 日、大会が終わりホッとして、ワロン地方の城塞都市ナミュールを訪れました。観光シーズンには駅前からバスが出るはずなのに、5 月は歩くしかありません。かなりのこう配のある丘を登りつめると、シタデル(城塞)のシンボル、シャトー・ド・ナミュールに辿り着きました。途中観光客もまばらで、道を尋ねることもママなりません。帰途は家のある方向に下りたつもりが、いつの間にか森の中に迷い込み、相当の時間をかけて駅前に戻ったのでした。27 日、往路と同じくヘルシンキ経由で帰国の途に着きました。

6 月5 日、阪南大学サテライト(大阪・淀屋橋)において春季の学会理事会を開催しました。わざわざ遠路お越しいただいた理事の諸先生、ほんとうにご苦労様でした。おかげで第31 回研究大会に向けて、2009 年度決算、2010 年度予算、大会報告予定者の決定など、重要案件を無事審議し終えることができました。また、鷲江義勝事務局長(同志社大学)の退任に伴い、このたび岩田健治教授(九州大学)が事務局長に就任されました。鷲江教授は田中素香、庄司克宏両理事長のもとで事務局長を担当され、私の代に至るまで丸5 年間ご苦労いただきました。ここに感謝申し上げます。岩田先生、どうかよろしくお願い申し上げます。

2010年9月27日掲載


理事長メッセージⅡ     学会の内/外

わが日本EU学会は、昨秋無事創立30周年を迎えました。設立の経緯については、前回(本誌No.23)触れたので省略致しますが、ここに改めて祝意を表し、学会創設にご尽力いただいた諸先生を初め、関係者各位ならびに会員諸氏のご協力に心から感謝申し上げます。EUが絶えざる深化と拡大を図り、ついにリスボン条約発効による新たな到達点に達したように、わが学会もこれを1つの節目としてさらなる充実・発展の域を目指して参りたいと存じます。

第30回研究大会は昨年11月14,15両日、同志社大学において「ユーロ10年と金融危機」を共通論題として開催されました。分科会も「EUの理念と民主的正当性」、「冷戦終焉20年と欧州統合の現段階」と、共通のテーマの下に行われたため、従来以上に組織立ったプログラム編成ができたのではないかと思います。ゲストスピーカーとしてお招きしたAnsgar Belkeデュイスブルク・エッセン大学教授とLaurent Bardon駐日欧州委員会代表部(現駐日欧州連合代表部)一等書記官、いずれも共通論題にふさわしいテーマで熱弁を振るって下さいました。ここに謝意を表します。

懇親会は1日目の夕刻、西村卓副学長ご臨席のもと、開催校・同志社大学のご協力とご好意により、盛大に行われ、30周年の祝賀ムードをいっそう盛り上げることができました。西村副学長、嶋田巧理事初め開催校の皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。

大会時に開催された理事会では、理事選挙の改革を図るための検討委員会および学会報告/論文のレベルの維持・向上を検討するための企画委員会を理事会のもとに設置することなどが合意されました。今後も継続的に学会運営の改革および研究レベルの向上の問題などに積極的に取り組みたいと考えております。会員諸氏におかれましては、旧倍のご理解とご協力をお願い申し上げます。

さて、新年早々の8・9両日、ニューデリーのジャワハルラル・ネール大学において第5回アジア太平洋EU学会(EUSA-AP)の研究大会が開催されました。共通テーマは、“Connections and Dialogue: The European Union and the Asia Pacific Perceptions, Policies, Perspectives ”。わが学会からは理事長のほか、中村民雄理事(東京大学)、岩松邦郎会員(神戸大学)、戸澤英典会員(東北大学)がインビテーションを受けて参加し、それ以外に田中俊郎理事(元理事長、慶応義塾大学)、鈴木均会員(新潟県立大学)、青柳由香会員(北海道大学大学院研究生)が参加しました。開催校ネール大学のPajendra K.Jain 教授による開会の辞およびEUSA-WorldのEnrique Banus会長による基調講演を皮切りに、総計40件を超える報告が以下の11セッションに分かれて行われました。1.グローバルアクターとしてのEU、2.SFSPとDSDP、3.EUと東アジア、4.EUと南アジアⅠ、5.同Ⅱ、6.EUと東南アジア、7.経済・貿易関係、8.エネルギー・社会市場、9.欧州のアイデンティティー、10.インドにおけるEU教育、11.アジアから見たEU。

報告は早朝から夕方遅くにまで及び、終了後は連日ディナーパーティーを催していただきました。各報告は10分から15分程度と短いのですが、EU研究の範囲の広さと奥深さを再認識させられる内容でした。フロアからの質疑応答も実に活発で、きわめて刺激と示唆に富む、有益な大会であったと思います。

大会終了後の10日には、同学会のお世話でアグラ地方にある有名なタージマハルまでバスツアーが実施されました。生憎現地ツーリストによる事前の連絡が十分でなく、参加できない方も出たようですが、幸い私は参加することができ、中学生のころから憧れていた聖廟の優雅な風姿を目の当たりにすることができました。前を走る車が見えないくらいの連日の濃霧と、コートなしに済まされない記録的な寒さには閉口しましたが、初めて訪れた異文化の国インドの大地を踏みしめることに感動を覚えて、無事帰国したのでした。あえて独断を許されるなら、近代を飛び越えて前近代と超現代が同居する町というのが、私のニューデリーへの印象です。

学会として、EUSA-Worldや EUSA-APなどの学術団体との国際提携を今後いっそう進めて参りたいと思いますので、機会のあるときにはどうか奮ってご参加ください。

(2010年1月22日掲載、2月13日更新)


理事長メッセージⅠ     就任に当たって

庄司克宏前理事長の後任として、4月に理事長に就任致しました辰巳でございます。歴代理事長の名を辱めることなく、微力ながら学会の発展に努めたいと存じますので、学会員の皆様のご指導とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。

庄司理事長の2年間の任期中に、本学会はいくつかの顕著な成果を上げました。第1は、昨年11月の研究大会において、積年の課題であった理事公選制を実現し、学会運営の民主化と透明性の向上に寄与したことです。今春スタートした理事会は、すべて選挙により選出された理事により構成されています。

第2は、研究大会における分科会を充実し、若手会員の研究発表の場を拡充したことです。若手を育てる「道場」として分科会を位置づけたいとの庄司理事長の熱い思いが伝わって参ります。

第3は、ECSA-WORLD、アジア太平洋EU学会(EUSA-AP)などとの関係を重視し、本学会の国際性ないし対外的発進力の強化に寄与してきたことだと思います。これらの成果を踏襲し、さらに発展させることが私に課せられた課題と心得ます。

今年は創立30周年という記念すべき年。学会運営におきましても1つの節目の年になることでしょう。今秋の研究大会の共通テーマは「ユーロの10年と金融危機」。グローバル化の進行がもたらしたアメリカ発の金融危機ではありますが、瞬く間に全世界を席巻し、なるほどグローバル化社会だと改めて実感させられたのも皮肉な事実です。ヨーロッパも例外ではなく、銀行に対する監視体制の強化、中小企業への支援、深刻な危機に見舞われた中東欧諸国等への救済策などにEUは苦慮してきました。研究大会では、この「百年に一度の大恐慌」にEUないしその加盟諸国がいかに対峙したのか、個別専門的および学際的な視点から十分に討議し、問題の核心を突きとめねばなりません。

さて、今後の学会運営に当たり、いくつかの課題が存在すると思います。
1つは、先に触れた理事選挙に関わる件です。ご承知のとおり、本学会は会員諸氏の研究分野を考慮して、経済、法律、政治・社会文化の3分野に分類し、理事会の構成もそれに従って各グループ10名ずつの理事を選出することになっています。ところが、法律分野に属する会員数が現在全体の約5分の1にとどまり、選挙結果においても同分野における理事当選者および次点者の得票数が相対的に少ないとの事実が残りました。従いまして、新たに選出された理事による会合(3月30日)では、たまたま法律分野の当選者に2名の辞退者が出たにも拘らず、補充しないことで合意し、本年度最初の理事会(5月30日)において、そのことを再確認致しました。いずれ法律分野の会員数が増加するなど、状況の変化が生じるまで様子を見届けたいというのが実情です。しかしながら、黙って手を拱いていても始まりません。今後、この問題を初め、今回初めて理事選挙を実施し、関係理事から指摘された諸問題も含めて継続的に検討するため、選挙制度検討委員会を立ち上げることが、同日の理事会において合意されました。構成員は、現理事長を含む理事長経験者、事務局長となります。今後は同委員会のもとで理事会運営の透明性を高めるために鋭意検討を重ね、やがて研究大会時の総会やニューズレターにおいてご報告申し上げます。会員諸氏には以上の事情をご理解いただき、ご意見をお寄せいただければ幸甚です。

第2に、より深刻な問題として、近年研究大会における報告および年報掲載論文の質の低下が憂慮されております。このことは、理事各位、とくに編集委員会のメンバー、その他年報論文の査読に当たる会員諸氏からしばしば指摘されています。1990年代の初頭、研究大会に出席された非会員の方が、本学会の研究水準の高さに驚嘆し、敬意を払って下さったことをいま想起しています。私はこの問題を重く受け止め、理事長のもとに各分野の理事を含む企画運営検討委員会(仮称)を創設して、現状の改善に努める所存です。

なお、残念ながら、毎号年報に掲載して参りました「EU関連文献目録(著者別)」は中止のやむなきに至りました。掲載対象が会員の業績のみで、EU研究のすべてを網羅していないこと、掲載された業績を引用・参照する会員が少ないこと、その割りにその作成に多大な労力がかかることがその主な理由です。長年にわたりご担当頂いた中村民雄理事に心から謝意を表します。

本学会は、運営上、駐日欧州委員会代表部に多大なご支援・ご協力を頂いております。
特にEU大使を初めとする方々の研究大会へのご出席およびスピーチ、ゲストスピーカーのご紹介など枚挙に堪えません。深謝申し上げますと共に、今後一層よきパートナーとしてご協力をお願い申し上げたいと考えております。

末筆ながら、会員諸氏のご健康とご発展を心より念じております。

以上。