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理事長メッセージ: 高屋定美

コロナ後の学会運営

2023年4月より理事長を拝命いたしました。会員の皆様とともに、また関係諸団体とも協力しながら、学会の発展のため微力ながら尽力したいと存じます。

新型コロナ感染下にありました2020年、2021年にはやむなくオンラインでの研究大会を開催いたしましたが、2022年に対面開催に戻しました。そして今年2023年は懇親会も予定され、ようやく本格的な学会の対面開催となります。あらためて会員皆様のご協力をお願いいたします。

会員皆様の研究対象であるEUは常に変化を迫られてきました。EUはこれまでもいくつかの危機に直面してきました。ユーロ危機やBrexitを経験しただけではありません。最近でも新型コロナ感染危機、ロシアによるウクライナ侵攻にともなう危機に直面し、そのたびに統合を推進する力とともに脱統合ともいえる力が働き、EU統合の複雑さを示しているといえるでしょう。私たちは政治・経済・社会・法律といった異なる学問領域から、その対象に迫っていますが、これからのEUの状況はより複雑になるものと考えられます。たとえば、ウクライナ侵攻は従来のEUの対外戦略である戦略的自立にも影響を与えるでしょう。また新型コロナ感染からの回復や競争力強化の新たな産業基盤形成のため、欧州デジタル戦略や欧州グリーンディールが打ち出されましたが、その成否とともにそれらがもたらす変化にも着目する必要があります。

私の研究対象は、EU経済であり、特にECBの金融政策を分析してきました。現在、EU経済はロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、高いインフレに直面し、ECBも利上げを行うといった対応をとり、それがEU構成各国にどのような影響を与えるのかが検証されるでしょう。また、グリーンディールは新たな環境政策であると共に、産業政策でもありエネルギー供給が不安な中で今後の展開は注視されるものと考えています。一方で、欧州政治において、構成国の中には移民などに不寛容な右翼政党が台頭しており欧州統合を推進するEUとの対立の可能性も今後、課題になるでしょう。いくつかの危機を経験してきたEUですが、今後も危機が起きうる可能性は潜んでおり、統合のレジリエンスが試されるでしょう。

さて、日本EU学会が直面する課題として、会員数の減少があげられます。わが国の少子高齢化にともない、若手研究者が減少しているため多くの学会でも同様の課題を抱えています。しかし、会員数の減少が続くことは、将来にわたる学会運営の継続に支障をきたすことにつながるでしょう。そのため、何らかの措置を講ずることが大切かと思います。また国際交流に関しても課題はあるものと考えています。新型コロナ感染が終息に向かい、各国との交流もコロナ前の状況に戻りつつあります。学会の国際交流も、今後、どのようにしてゆくのか検討することも必要と思われます。

いままでの理事長、理事会がそうであったように、オリジナリティーがあり、緻密に練られた研究を進めるための、学問上の研鑽の場として学会を盛り上げていきたいと考えています。これまでも多くの研究成果を達成してきた学会ですが、今後も一層の発展を促す場としての機能を強化していきたいと考えております。会員皆様方の一層のご協力をお願いいたします。

(2023年7月27日更新)


過去の理事長メッセージ

森井裕一理事長(2021年4月〜2023年3月)

中村民雄理事長(2019年4月〜2021年3月)

岩田健治理事長(2017年4月〜2019年3月)

福田耕治理事長(2015年4月〜2017年3月)

須網隆夫理事長(2013年4月~2015年3月)

久保広正理事長(2011年4月~2013年3月)

辰巳浅嗣理事長(2009年4月~2011年3月)

庄司克宏理事長(2006年11月~2009年3月)