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岩田健治理事長(2017〜19年)

メッセージ4

2018年11月17-18日、獨協大学にて第39回研究大会が共通論題「ポピュリズムとリージョナル・アクターとしてのEU」のもとで開催されました。全体セッションⅠ~Ⅲでは、EUにおけるポピュリズムの伸長を巡って、EUIのMiguel Maduro教授による報告の他、各研究分野や各国の専門家による独自の視点からの集中した議論が行われました。どれも当学会ならではの大変有意義なセッションでした。また日本に着任されて間もない駐日EU代表部のPatricia FLOR大使にご登壇いただき、戦後の世界秩序が揺らぐ中でのEUの課題について講演をいただきました。昨年度からスタートしたポスターセッションも、2名の院生報告を得て、すっかり定着した感があります。充実したプログラムをご準備いただいた企画委員会の皆様、行き届いた大会をご準備いただいた開催校の皆様、そしてご報告や討論をいただいた全ての皆様に厚く御礼申し上げます。

2017年4月の就任以来、あっという間の2年間で、理事長メッセージも今回が最後となります。振り返りますと、人文・社会科学系の研究に逆風が吹き荒び、また研究対象であるEUもBrexitなどに大きく揺れる中、EU研究の意義や学会の真価が問われた2年間であったようにも思われます。EUという前例のない地域統合を扱うユニークな学際系学会として、中長期的には人材育成という原点に立ち返る必要があると強く感じ「EU研究エコシステム」なる大風呂敷を広げてはみたものの、実際にできたことはといえばあまりにも控えめなものでした。それでも、前執行部から成案として引き継いだ、ポスターセッション新設や地域部会の開始、さらに理事・会員の皆様の創意あふれるご提案による、年報投稿の常時受付化、EU研究奨励賞の創設、ハラスメント防止宣言など、次世代EU研究者育成に向けた環境は着実に整えられつつあるように思います。また12年ぶりに日本で開催されたEUSAAP 2017(青山学院大学)の成功と、それに触発された同2018(国立台湾大学)への日本からの積極的参加は、国際的成果を求められる若手研究者にとっての環境整備が進んだことを示しているといえましょう。理事をはじめ会員の皆様のこうした創意やご尽力の結果、2018 年11月の理事会では20名の会員を新たに学会に迎えることができ、この間続いた会員の減少傾向はボトムアウトしたようにも見受けられます。EU研究というディープな世界に飛び込んでこられた若い会員の皆様の今後のご活躍を願わずにはおれません。

昨年11月の理事会では2019年4月からの次期理事長に、中村民雄理事が選出されました。日本EU学会理事としての四半世紀にも及ぶ豊富なご経験とリーダーシップにより、中村新理事長のもと学会の一層の発展がもたらされるものと確信致しております。どうかよろしくお願い申し上げます。

その新執行部のもとで開催される次期研究大会は、第40回という節目の大会となります。井上典之理事を大会準備委員長とし、本年11月16-17日、神戸大学で開催いただけることになりました。共通論題は「変貌する時代のEU―統合の新たな探求」で、八谷まち子企画委員長のもとで報告希望の受付も始まっております。若手の皆様による優れた報告論文にはEU研究奨励賞も用意されております。会員の皆様の積極的なご応募をお待ちしております。

末筆ながら、この2 年間の任期中に賜りました会員・理事の皆様の創意あふれるご提案やご尽力の数々に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。特に、森井裕一事務局長には、迅速かつ完璧なお仕事ぶりで学会の運営をいつも支えていただきました。本当にありがとうございました。

(2019年2月14日)


メッセージ3

2018年7月、念願の地域部会が関東と関西で相次いで産声を上げました。精力的にご準備にあたられた部会幹事をはじめとする関係者の皆様、まことにご苦労様でした。従来、若手研究者の登竜門は研究大会2日目午前に設定される分科会で、昨年の研究大会で試行的に導入されたポスターセッションが、それを補強してきました。今回の地域部会創設は、そうした挑戦の機会と頻度を飛躍的に拡大することで、若手研究者育成環境の整備を軸とする「EU研究エコシステム」の構築に大きく資するものです。二つの部会が軌道に乗ることで、他のエリアでの部会立ち上げにも勢いが付くことを期待しております。

本年度のEUSAAP(アジア太平洋EU学会)年次大会は、6月28-29日に国立台湾大学で開催され、日本の学会理事長として参加して参りました。台湾欧州研究協会(ECSA TW)による行き届いたホストのもと、100名を大きく超える参加者により活発な議論が行われました。日本からも20名を優に超える会員が参加し、現地で一大勢力を形成しておりました。これも昨年度の青山学院大学でのEUASAP開催の一つの成果かもしれません。なお、将来再び日本でEUSAAPを引き受ける際に開催校が資金面で困窮しないよう、昨年度大会で生じた余剰資金については別枠でプールしておくことを4月の理事会で決めております。

本年度の第39回(2018年度)研究大会は、11月17-18日、獨協大学での開催となります。現在、準備委員長の大藤理事のもと鋭意準備が進められております。蓮見理事を中心とする企画委員会のご尽力により、共通テーマ「ポピュリズムとリージョナル・アクターとしてのEU」のもとで魅力的なセッションが数多く組まれております。昨年度の大会に続きポスターセッションも設けられ、また二日目午後のセッションは広く市民に開放されます。多くの会員の皆様のご参加をお待ち申し上げております。

さて「EU研究エコシステム」構築に向けて学会として知恵を絞っているところでありますが、この4月の理事会では以下の2点について合意に至りました。

第1は「EU 研究奨励賞」の創設です。これは40歳以下の若手や博士課程の学会会員を対象に『日本EU 学会年報』に掲載された優れた単著論文の著者に授与されるものです。

第2は『日本EU学会年報』への投稿の常時受付体制への移行です。これは研究大会での報告を特に希望しない年報執筆希望者に対し、随時原稿を提出することができるようにするものです。

他にも、なおいいアイデアがあるかも知れません。引き続き会員の皆様のお智恵とご協力を賜りたく、お願い申し上げる次第です。

最後に、2018年4月に遡り編集委員会委員長が、高屋定美理事から松浦一悦理事に交代となります。高屋理事には2014年より4年間の長きにわたり、ご苦労の多いお仕事をおつとめいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げる次第です。

(2018年8月25日)


メッセージ2

2017年11月18-19日、九州大学にて第38回(2017年度)研究大会が共通論題「ローマ条約60年―危機の中の再検証―」のもとで開催されました。各セッションでの具体的な議論については本ニューズレターの記事に譲りますが、今回の学会大会では企画委員会の創意で、次のような新機軸が打ち出されました。第1に、大会初日の全体セッションⅡでは、駐日EU代表部のFrancesco Fini公使とBrigid Laffan教授の報告の後に、全体セッションⅠで登壇された4名の報告者も交えたディスカッションの時間が設けられました。第2に、本学会大会で初めてポスターセッションが設けられ、多数の会員が参加。報告者との間で活発な質疑応答がなされました。第3に、2日目のセッション第Ⅲ部は、市民の関心も高いBrexitをテーマとし、ジャンモネCoE九州との共催のもとで一般公開セッションとしました。こうした工夫の甲斐もあって約120名の会員・市民の皆様の熱心な参加のもと大会は無事終了致しました。

第39回(2018年度)研究大会は、本年11月17-18日に獨協大学にて「ポピュリズムとリージョナル・アクターとしてのEU」をテーマに開催されます。既に報告希望受付も開始されております。多くの会員の皆様の積極的応募を期待しております。また5月28-29日には台湾・台北において、アジア太平洋EU学会(EUSA-AP)大会が開催されます。日本からも多くの会員の参加が望まれるところです。若手の報告予定者には国際交流助成も用意されています。

前回のメッセージⅠでも触れたように、学会会員の減少傾向を反転させるためには、研究大会や学会誌のアカデミックな質の維持・発展を基本線としながらも、必要な改革を戦略的に実行に移していく必要があります。昨年11月の理事会では、次世代の若手EU研究者育成環境の整備のため、(1)学部教育、(2)大学院での学会報告・論文公刊・学位取得、(3)大学等のEU研究職への就職・・・と連なる一連の過程を「EU研究エコシステム」としてとらえ、現在そのシステムのどこに問題が生じているのか、またそうした問題に学会としてどう取り組んでいくことができるのかについて議論を致しました。

既に11月の理事会・総会で承認いただき実施が決まっている改革は二つあります。第1は、地域部会の創設です。いよいよ2018年度から関東部会と関西部会が立ち上がります。部会は若手研究者の登竜門としても是非活用いただきたいと思います。第2は、研究大会開催校への支援拡充策です。研究大会開催費(50万円)とは別に、近年多くの大学で高騰している会場費について、その実費(上限25万円)を学会が支援致します。もはや資金に関して憂慮することなく研究大会を積極的にお引き受けいただける環境が整いました。

このほかにも理事会では、学会予算の中長期方針、年一度しか申し込みの機会がない『日本EU学会年報』への論文投稿方式の改善、英文ホームページの構築、地域やジェンダーを考慮に入れた理事選出方式等々について鋭意検討中です。

以上どれも「EU研究エコシステム」を直接・間接に強化し、当学会、ひいては日本におけるEU研究の反転攻勢につながる重要施策と考えられます。他にも、まだまだいいアイデアがあるかもしれません。学会会員の皆様からの積極的なご意見をお待ちしております。

(2018年2月21日)


メッセージ1

2017年4月より2年の任期で、日本EU学会理事長を拝命致しました。会員の皆様と力を合わせ、また関係諸団体とも協力しながら、学会の一層の発展を目指して微力ながら尽力して参りたいと存じます。

1980年の創立以来、日本EC/EU学会は、様々な困難や危機に直面しつつも、常に統合を「深化」させつつ「拡大」するEC/EUを研究対象としてきました。ところが昨年6月の英国のEU離脱決定(Brexit)を境に「拡大」はもはや所与ではなくなり、本年3月に欧州委員会が発出した『欧州の将来に関する白書』では「深化」を放棄するシナリオも検討されています。巷にはEUやユーロの崩壊をタイトルとする文献が広く流通しています。個人的にも、他分野の研究者から「消滅するEUを研究して何になるのか…」といった言葉が投ぜられるようになりました。

もちろんEUはそう簡単には崩壊しませんし、ユーロも制度改革次第では存続発展が可能であることは言を俟ちません。しかし同時に、私たちEU研究者は、なぜEU統合が困難に直面しているのか、そしてそうした困難をどのように解決可能なのか、ディシプリン横断型学会の強みを生かして解明し、その成果をブレることなく社会に発信するという大きな課題を新たに背負ったものと考えられます。その成否は、学会の中長期的な消長にも大きく影響して参りましょう。その意味で、この間、当学会会員が長年の研究に裏打ちされた的確な知見を、各種メディアを通じて広く社会に発信していることは大変意義あることと考えます。

そうした社会的成果を生み出す学会のアカデミックな活動の基軸は、いうまでもなく年次の研究大会と『日本EU学会年報』であります。加えて本年度は、7月1〜2日に、2005年の慶応義塾大学大会以来12年ぶりにアジア太平洋EU学会(EUSA-AP)大会が日本で開催されます。開催校の青山学院大学・羽場久美子理事を中心に大会実行委員会が組成され精力的に準備をいただいております。世界20カ国以上から約150名の参加が見込まれており、ホスト国の学会として是非とも成功させたいと考えております。また本年11月18〜19日には九州大学にて、第38回(2017年度)研究大会が共通論題「ローマ条約60年―危機の中の再検証―」のもとで開催されます。同大会では、試行的にポスターセッションも設けられます。多くの会員の皆様の参加をお待ちしております。

さて、ピーク時の2000年代に500名を優に超えた学会会員も、2017年3月末時点で467名にまで減少しています。少子高齢化、日本の高等教育政策における人文学・社会科学の軽視(=組織再編圧力や予算削減等)、インターネット時代の「地域研究」の手法や社会的役割の変化など、諸要因が複合的に絡みあった結果と考えられます。会員全体の努力で学会大会や学会誌のアカデミックな質を維持・発展させることこそが、こうした流れに抗する基本と考えますが、加えてこの間、歴代理事長・事務局長のイニシアティブのもと、理事選挙制度の導入・改革、大会プログラム拡充のための企画委員会創設、国際交流委員会の創設、若手会員育成のための地域部会の立ち上げ決定など、学会活性化に向けた各種の積極的な改革が実施されて参りました。また学会運営のサステナビリティという観点から、従来事務局長に過度に集中していた業務の分散化も図られて参りました。こうした改革に取り組んでこられた歴代執行部の皆様、とりわけこの3月に退任された福田耕治理事長と小久保康之事務局長に厚く御礼申し上げます。

今後とも、後任の森井裕一事務局長と力をあわせ、学会運営の一層の活性化に取り組んで参る所存です。本年4月の理事会では、直近の理事長・事務局長経験者からなる制度改革委員会も立ちあがり、改革を継続する体制も整えられました。他にも、地域部会の具体化、EUSA-AP大会開催後の新たな長期的予算方針の確立、学会員向けメール配信システムの再構築など課題が山積しております。今後2年間、会員の皆様のお知恵を得ながら、こうした諸課題に取り組んで参る所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。

(2017年6月30日)