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理事長メッセージ

念力を超えて

4月より理事長として学会を盛り立てる役となりました中村民雄です。一つの話をまくらに、抱負を語りたいと思います。

今年3月のこと。29日のBrexit(英国のEU脱退)日が迫っても、英国議会はメイ政権がEUとまとめた脱退協定案を大差で否決し、次の一手も決することができずにいたそのとき、忽然と現れたのが、ユリ・ゲラーでした。1970年代にスプーンを念力で曲げる(と称する)パフォーマンスなどで一世を風靡したあの人物です。ちなみに平成生まれの学会員には、ポケモンGoのユンゲラーの人間版と思っていただければ結構です。もっともこの人間版はフーディンに進化せず、また不思議と老化もしないのであります。

そのユリ・ゲラーが3月22日、「念力でBrexitを止めてやる」宣言を公表。サイコ的に英国民の大半がBrexitを望んでいないと感じた。なればテレーザ、そなたがそれを強いるなら、われ念力でそれを止めん。こうのたもうた。あな、おそろしや。実際、本稿執筆時(憲法記念日)まで止まっているのであります。これは笑いぐさでしょうか。

ならばお尋ねしますが、私たちのどれほどが、念力を超える〈思念力〉をもって、EU進化史におけるBrexitの政治・経済的含意や思想的意義を論評し、またBrexitとEUの抱える諸問題との関係の有無を体系だって説明できるでしょうか。出来事をなぞり、目先の選択肢や予測にすぎない可能性を語ってお茶を濁していませんか。

いなBrexitだけではありません。そもそもEUなる存在を、単に集権的統合ありきの目線でのみ語るのではなく、集権的統合も脱統合や差異化もどちらも同時にありうるといった目線や、欧州茶碗の中の嵐とグローバル風を吹かせる目線からも、ためつすがめつ、思念し分析しているでしょうか。分析の道具立てを本当に我々は十分にもっているのでしょうか。自分の目線やモデルすら疑う内省をもって、日々、次なるリサーチに我々は取り組んでいるでしょうか。

こういう謙虚にして直球の知的探求を以て、私は日本EU学会を盛り立てていきたいと思います。ネット社会の今更、新情報を得るために学会に来る人は多くありません。そうではなく、星屑ほどある情報から玉を瞬時に選別し、星座を描くように学問的方法をもって関連づけて含意を読み解く。さまざまの星座の描き方(=リサーチ)の強靭さを異なる目線から議論して試してみる。そういう知的刺戟の悦びを求めて、会員は研究大会に来られるのだと思います。それを実現しましょう。企画に力を入れて学会を盛り上げ、また地方部会で練られた緻密な報告を推挙し、遠くであっても来てよかったと思える研究大会を実現していきたいと思います。こうして新参の会員であっても発言し報告したくなるような雰囲気をいっそう高めていきたいと思います。

どうぞ皆様、ご参画のほど、よろしくお願い申し上げます。

(2019年5月3日)


過去の理事長メッセージ

岩田健治理事長(2017年4月〜2019年3月)

福田耕治理事長(2015年4月〜2017年3月)

須網隆夫理事長(2013年4月~2015年3月)

久保広正理事長(2011年4月~2013年3月)

辰巳浅嗣理事長(2009年4月~2011年3月)

庄司克宏理事長(2006年11月~2009年3月)